löyly(ローリュ)の方法(北欧ローカルサウナを見てきて)
- SaunaHax

- 11月23日
- 読了時間: 6分
執筆者:佐藤 啓壮(医学博士)

フィンランド式サウナの楽しみの一つに、熱く熱したサウナストーンの上に柄杓(ラドル)ですくった水を掛けて、蒸気を楽しむ、ローリュ(löyly)が有ります。私は2016年にフィンランドの大学に招待されて初めてフィンランドへ行って、凍った湖の畔で楽しむ、本当のフィンランドサウナを体験してから、コロナ禍の年以外、毎年数回、フィンランド(と、北欧)へサウナをしに訪れています。主に日本で紹介された有名処では無く、ローカルSUOMI達に聞いた、田舎のローカルサウナを訪問し続けています。その際、気付いたローカルSUOMI達によるローリュのやり方のパターンを紹介します。ローリュは、フィンランドサウナに必要な儀式の一つで、ローカルSUOMIによっては、かなり神経質な方も存在します。私も、初めて入るローカルサウナでは、まずは、ローカル達のロールの方法を見てから、周りのローカルの方に許可を取ってから、ローリュを真似するようにしています。すると、人なつっこいSUOMIの方々は、微笑みながらやり方を教えてくれたり、水から実演してくれます。
大きく分けて、2種類の方法があります。
ドリップコーヒー型
ドリップコーヒー型とは、私が名付けましたが、正に、ドリップコーヒーにお湯を注ぐかのごとく、サウナストーンに回すようにゆっくりと少量ずつジョロジョロと水を掛ける様な方法です。初心者や、まだまだ、なじみの少ない日本人には良い方法だと思いますが、私は危険だと思います。ラドルの柄が短いと、蒸気で火傷をする可能性が高い方法ですので気をつけてください。
投げ込み型
投げ込み型のやり方ビデオはこちらから↓
これは、フィンランドローカルサウナでよく見る方法です。私も練習しました。文字通り、柄杓に1/3の水を入れ(満杯入れるとうまく出来ません。1/3以下の量が目安)数メートル離れた場所から、投げ入れるように水を掛けます。慣れないと、サウナストーンに掛かる水よりも、途中でこぼれる水の方が多く、床が水でびちゃびちゃになってしまいます。フィンランド人に聞くと、サウナは濡れている物なので、びちゃびちゃで何が悪いんだ?と不思議な顔で見られます。また、日本のサウナ施設自体が、ローリュに対して「ストーブが壊れる」「無茶苦茶やる人がいる」という理由で禁止しているか、上記のコーヒードリップ型のチョロチョロしか水をかけてはダメという施設がほとんどであると思います。また、日本の施設はあまり耐水性の低い構造である事が多く、多くの日本のサウナ施設施工者は嫌がります。
フィンランドローカルサウナ式のロールに慣れると、投げ入れた水のほとんどがサウナストーンに掛かるようになります。ローカルサウナでは達人とおぼしきおっちゃんが、ピュッと正確無比にサウナストーンに投げ入れる方がいて感心します。 勿論、他の方に水が掛からないようにする配慮は絶対に必要です。また、日本ではまだまだなじみが無いので、この方法をやると怒られる施設がほとんどでしょう。ですが、北欧(少なくともフィンランド、エストニアで見ました)では多くの方がやっている方法です。利点は、火傷の心配が無い。移動しなくて良い。一箇所だけに大量な水が掛からない。が挙げられます。逆に欠点として、床が水でびちゃびちゃになる(但し、北欧では、サウナ室は床が水で濡れていても、「当たり前でしょ?」と言って気にしない)。他の人に掛かると迷惑(これは北欧でも最低限のマナーだと感じました)。多分、日本だと、前の方が居ても後から水を掛ける方が出て、客同士トラブルになりそう・・・。な気はします。
※後ほど、実際にサウナ施設さんから聞いているトラブル事例を記述します。
番外編
フィンランドTurkuのお気に入りのサウナの一つは、1階が巨大なストーブと大きく山盛りになったサウナストーンが鎮座しており、お客さんは階段で2階に上がって、2階からローリュをします。これが、サウナストーンの上へパイプが届いており、しかも、そのパイプは上から吊っていてフリーに動かせるようになっています。2階のサウナ客達は、各々好きなタイミングで2階からそのパイプを使って水を注ぎ込み、ローリュをします。自分が使う分の水は自分で1階からバケツに水を入れて持って行くローカルルールになっています。
日本の現状
コロナ禍前くらいから火が点いた日本でのフィンランド式サウナブーム。熱しやすく、冷めやすい日本人気質からでしょうか、多くの施設でローリュに関する様々なトラブルを聞いています。ここで紹介してみましょう。
防水規格の電気式サウナストーブに水を掛けてしまう→故障する
昔からの健康ランドに置いてある電気式サウナストーブに多いのですが、電気式サウナストーブが防水規格に対応しておらず、サウナストーブの底面の配線がショートして故障します。また、防水規格の物であっても、日本ではめちゃくちゃする方が一定数いますので、想像を絶する水の量をかける事例を経験しています。(後述)
一度に大量の水を掛ける→故障する
日本人はマニュアル気質です。「適量の」と書かれた「適量」の」量を指示しないと判らない!と言われる方が多いです。そのため、サウナストーンにバケツから直接、または、柄杓から何度も何度も水を掛け、サウナストーブの底面が水でびしゃびしゃになるくらい掛ける方が多くいます。これを行うと、前述した旧式の電気式サウナストーブでは、漏電やショートして故障します。
ここであらためて記載します。ローリュの水の適量とは、
1.柄杓の1/3~半分までしか水を入れない(50~100cc程度)
2.一箇所のサウナストーンだけに水を掛け続けない
3.サウナストーンがまだ濡れている(前回のローリュから時間が経っていない。または、サウナストーンがまだ温まっていない)時はローリュしない
4.ローリュの間隔はサウナストーンの量やサウナストーブのパワーにもよりますが、10分~15分は間を開けましょう
冷たい水を掛ける→故障する
北欧のサウナでは、ローリュ用のバケツは、水を汲んだらサウナ室内に置いて、水を温めます。
汚い水、または何かを混ぜて掛ける→臭くなる
フィンランドでのローカルサウナの経験から言わせてもらうと、ローリュの水にエッセンシャルオイルを混ぜて臭いを楽しむサウナは経験したことがありません。勿論、高級なところや、ラトビア(超高級)では記載されているのを見たことがあります。また、ハーブをメッシュ紙に入れて、ロールする水に漬け込む製品も販売されていますが、ほとんどが自宅用だと思います。サウナストーブを設計して販売する立場から言わせてもらうと、綺麗な水だけが良いと思います。
水道水は綺麗なのですが、塩素が含まれますので、サウナストーンやサウナストーブ表面に塩素の結晶が蓄積されます。定期的に落とす必要があります。
以上、日本でのローリュの現状を見るに当たって、思い付いたことを記してみました。
なお、JR大宮駅西口のサウナ施設に設置している当社のサウナ小屋では、フィンランドローカルサウナ小屋を再現しました。ローリュを楽しんで貰うべく、高熱量で設計しております。お近くの方は是非、お立ち寄りいただき、ローリュを楽しんでほしいと思います。





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