サウナストーンの正しい積み方と「熱さ」の真実
- SaunaHax

- 1 日前
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執筆者:佐藤 啓壮(理学療法士、鍼灸師、医学博士)

サウナストーンは、単に「温まった石に水をかけるためのもの」ではありません。ストーブが発生させた熱を効率よく部屋に送り出し、かつ心地よい蒸気(ロウリュ)を生み出すための「熱交換器」と、「蓄熱」の役割を果たしています。
1. 「空気の流れ」をデザインする:対流の重要性
サウナストーブの基本原理は「対流」です。熱源で暖められた空気は軽くなり、上へと上昇します。よく、サウナに詳しいと称する方々が敷き詰めたサウナストーンをよく見ます。サウナストーンはぎゅうぎゅうに詰めるのが良いのでしょうか?私は工場でサウナストーブのテストや改良、改善に出向いて、技術者達と設計、デザインを行います。私はサウナストーンに関して以下の様に考えています
「ふんわり」と置くのが鉄則: ストーンをぎゅうぎゅうに詰め込んでしまうと、空気の通り道が塞がれます。すると、熱がストーブ内部にこもり、部屋が温まらないばかりか、ストーブの故障や火災の原因にもなりかねません。実は、後述しますが、サウナストーンの量が熱量を生む!という都市伝説を信じたお客様から、突然、電気式サウナストーブが熱くならなくなった。とクレームをいただきました。現地へ行くと、電気式サウナストーブの周りまでもサウナストーンで覆っていました。実は、当社の設計した電気式サウナストーブは、サウナストーブ底面に温度ヒューズという、もし、サウナの制御盤や、温度センサーなどの不具合が起きて電気ストーブが暴走しても、そうならないように予め2重3重の安全機構を設置しています。通常、サウナストーブ底面の温度が120℃になると、バイメタルと呼ばれる熱膨張率の違う2種類の金属を挟んだスイッチを設置し、設定温度を超えると制御盤や、サウナの温度センサーが何度であろうとも、強制的に電源を切る安全装置になります。これが働いていました。サウナストーブの内部や周りにぎっしりとサウナストーンを敷き詰めると、サウナストーブ底面までも120℃を越えてしまい、安全装置が働くのです。サウナストーブがそれほど熱を持ち続けることは良くないことです。熱放射の効率上、必ず、空気の流れを考慮するべきです。理想は「隙間」を意識することです。石と石の間に指が入るくらいの余裕を持たせ、下から上へ空気がスムーズに流れる「煙突効果」を邪魔しないように積み上げましょう。
大きな石から順に: 基本的には、下層に大きな石を配置し、上層に行くにつれて中~小サイズの石を置くのが安定感と通気性、そしてローリュの際の蒸気の発生を両立させるコツです。
2. 「ストーンが多い=熱い」は大きな迷信?
「石をたくさん積めば積むほど、サウナ室は熱くなる」と言っている専門家と称する方々がいらっしゃいます。少なくとも、何種類もサウナストーブをテストし、トライアンドエラーを繰り返してから言ってほしいものです。思われがちですが、これは半分正解で、半分は間違いです。
熱容量と室温の違い: 石が多いほど、蓄えられる熱(熱容量)は増えます。しかし、石を積みすぎると空気の流れが阻害されること、更に、たくさん積んだサウナストーンを温めるのに大きな熱エネルギーが取られ、サウナ室の温度が上がるのに時間がかかります。熱物理学から考えれば、サウナストーン自体が自身で発熱するのではなく、ヒートエレメント(電熱線)や薪ストーブ内で薪が燃えることにより発生した熱を蓄えるだけになります。そのため、サウナストーンが多ければ、サウナ室温を上昇させるには時間がかかり、サウナストーンがなければ、サウナ室の温度はすぐに上がるようになります。逆に、既に暖められたサウナストーンの量が多いと、サウナストーン自体の蓄熱効果により温度が下がりにくくサウナ室の扉を開け閉めしたりしても、温度が低下するのは抑えられます。ヒートエレメントだけだと、すぐに温度は上がりますが、扉を開けたりするとすぐに室温が下がります。
では、なぜ、サウナストーンを置くのでしょうか?その答えは、ローリュの安定性と輻射熱が身体に及ぼす良い影響にあります。
「体感温度」のトリック: サウナストーンが多い事で得られるメリットは、ロウリュをした際の蒸気量にあります。大量のサウナストーンが既に暖められていれば、多少の水をかけても、暖められたというか、熱々に熱せられたサウナストーン上でローリュの水が瞬時に蒸発するのと、蒸発に必要な表面積が大きくなるので、サウナストーブの温度が下がりにくく、安定したローリュが楽しめるようになります。だから、フィンランドのサウナには沢山のサウナストーンが使われているのです。
また、実は日本の施工業者のサウナ室の設計に多いのですが、熱源がストーブだけと言う考え方。実は正しくもあり、フィンランドサウナ的には一部間違えているもあり・・・。という感じです。フィンランドの古典的なスモークサウナに入ると判るのですが、2日ほど暖め続けたサウナ室はどこもかしこも熱を帯びていて、この全方向からの輻射熱が素晴らしい体験を生じます。サウナはストーブだけの熱源ではなく、サウナ室内全体から照射される輻射熱を楽しむイベントだと思っています。先日、久しぶりに大型の薪ストーブ「Valkaani」を設計して、JR大宮駅のサウナ施設「リトデポ」にサウナ室も併せて設置しました。この時に、当社のサウナ小屋設計者と話をしたのは、この全周囲から放射される輻射熱の再現でした。この施設は他の色々なサウナを体験、比較出来る施設ですので、一度体験すれば、違いがハッキリ分かります。ただ、熱いだけのサウナとは全く違う体験が出来ると思います。
3. サウナストーンにまつわるトピックス&チップス
サウナの楽しみがさらに深まる、石に関する豆知識をご紹介します。
① 石の種類による「ロウリュ」の質
サウナストーンには、天然石と人工石(セラミック)があります。
大きな違いは性能の安定性です。天然石は文字通り、天然で超長い年月と圧力を経て生成される石になります。そのため、同じ場所で採掘された石であっても性能にムラがあることは否めません。サウナストーンに必要な性能とは、まずは、爆ぜないこと。これは安全上、最も重要な性能になります。そのため、太古の昔に火山のマグマが超高圧で圧縮されて出来た石は密度が高く、生成時の石の中に含まれる水分量が少なく、且、密度が高いため、石の表面までしか水分が染み込まない物になります。そのため、特に、初めて熱をかけた際には、石の内部に残っていた水分が破裂(爆ぜる)することがあります。そのため、当社で販売しているサウナストーンは必ず初期の慣らしをすることをマニュアルに定めています。初めてサウナストーンとして使用する場合は、必ず、無人状態で加熱して8~12時間程度最大温度で稼働させて爆ぜさせます。一旦、温度が上がり、石の深部に含まれた水分が落ち着くと、その後は、ローリュで水をかけても爆ぜにくくなります。それでも、ヒートエレメントに触れているところは(ヒートエレメント表面温度が450℃くらいになるので)少しずつ石の角が壊れて砂になって、下に落ちてきます。これが、数年サウナストーンを変えなかった施設のストーブの下に砂が落ちている証拠になります。
以前このような事象を知らないあるサウナストーブ会社のストーブでお客様が爆ぜた石片で怪我をすると言った事もありました。どうしても、安全を優先するのであれば、後で述べる人工石を使用するのも選択の一つだと思います。
サウナストーンの種類
火成岩(天然): フィンランド産(香花石)や中国大陸奥地などの火成岩。密度が非常に高く熱に強く、水分を適度に吸収するため、マイルドで良質な蒸気が発生します。他の石との違いは、表面の滑らかさと持ったときに感じるずっしりとした重さです。
セラミックストーン(人口): 形が均一で通気性を確保しやすいのが特徴。製造時に数千度の温度で焼成するので性能が安定しています。割れにくく衛生的、安全です。
② 「石の寿命」に気づいていますか?
サウナストーンは一生モノではありません。熱せられて冷やされるという過酷なサイクルを繰り返すうちに、石の表面、特に尖っているところから少しずつ削れて(割れて)いきます。
カチカチという音に注意: ストーブから小さな破片が落ちていたり、ロウリュの際に石が割れる音がし始めたら交換のサインです。
メンテナンスの目安: 施設の利用頻度にもよりますが、半年に一度はすべての石を取り出し、水洗いして割れたものを取り除くのが理想的です。
③ 最高のロウリュを生む「水」の温度
実は、かける水の温度も重要です。氷水のような冷たすぎる水は、石に急激な温度変化(熱ショック)を与え、石を早く痛める原因になります。よく、冷水浴用の浴槽から汲んでいるのを見ますが、常温または、フィンランドの施設のように、サウナ室内に桶を置いておき、ぬるま湯にしてを使用するのが、石に優しく、かつ蒸気も立ち上がりやすくなる裏技です。また、実は水道水もあまりお勧め出来ません。水道水をそのままサウナストーンに掛け続けると、石の表面に水道水に含まれる塩素の白い結晶が付着してきます。性能的には特に問題はありませんが、サウナ室内で一旦水道水を温めて塩素を抜いておくと、白い結晶が着くことを予防出来るでしょう。
④ 石の「お掃除」がサウナの香りを決める
私はフィンランドの公衆サウナへ年に数回行っていますが、アロマ水を用いたローリュを行うところには、未だかつて出会ったことがありません。但し、サウナ用品屋さんでは、バーチ(白樺)の香りなどのローリュ用のオイルエッセンスが売っているのを見たことはあるので、自宅での使用が前提なのでしょうか?
アロマオイルを使用する場合、石にオイル成分が焼き付いて焦げ付くことがあります。これが「サウナ特有の焦げ臭さ」の原因です。定期的に石を洗浄し、配置を入れ替える(ローテーション)ことで、常にクリーンな香りのサウナ室を維持できます。また、当社のサウナストーブを使用している施設でイベントでサウナの熱波師と言われる方々(ちなみにフィンランドでのローカルサウナでは熱波師は一般的ではありません。見たことないです)がこのオイルを大量に使うために、ヒートエレメントの底面に長年の焦げが堆積し、ショートしてしまう事案がありました。多くの有機物(アロマオイル、木材、食べ物、さらには人間の皮脂や汗など)は、そのままでは電気を通さない絶縁体です。しかし、熱によって「焦げる」プロセスで性質が劇的に変わり(炭化)ます。
炭化のプロセス: 有機物が加熱されると、水素や酸素が揮発し、**炭素(カーボン)**だけが残っていきます。
グラファイト構造の形成: 焦げがさらに進み、純度の高い「炭」の状態になると、炭素原子同士が結びつき、電気を通しやすい構造(グラファイトに近い状態)へと変化します。
導電性の発生: この「炭の層」が電気の通り道(回路)を作ってしまうのです。
ヒートエレメントの表面温度は450℃もあり、通常の水分量だと、ヒートエレメントを伝って底部に到達する前に瞬時に蒸発してしまいますが、バケツで水をひっくり返すほどかけ続ければ、ヒートエレメントの表面温度が下がり、底面の基部までオイルやエッセンスが到達したのでしょう。これは我々がサウナストーブを設計する上での課題となり、その後、対策部品を追加しました。が、やはり、水を限度なくかけすぎるのも考え物です。よく、施設によっては、「ローリュはしないでください。壊れます」と書いてありますが、かけるにも限度(節度)があるということです。ちなみに、フィンランドではそのような掲示は見たことがありません。日本特有だと思います。余談ですが、我々が経験した事例集だと水以外の物、「汗」、「小便」(これはニュースになったので知っている方もいるかも?)をかけて凄い臭いになってしまった施設も有ります。民度の違いでしょうか?フィンランド国民はサウナを神聖な場所として見ていますので考えられない事例です。フィンランドの友人に聞くと口々に「信じられない」!と言います。残念ですが、日本の現実です。
まとめ:石は「呼吸」させてあげるもの
サウナストーンを敷く際は、**「石を窒息させないこと」**を意識してみてください。空気の流れを味方につければ、ストーブのパワーは最大限に引き出され、柔らかく包み込むような最高の熱気へと変わります。
ローリュは少しずつ頻回に。但し、その施設のルールに則ってください。







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